スピッツのチェリー

スピッツのチェリー

スピッツのチェリー

 

当時の私は従順だった。
付き合っている彼がカラオケにいきたいと言えば、カラオケについて行っていた。
会うたびに行っていた。
そんな中、ある日彼が持ち出したのがカセットテープ。
カラオケで録音できるというのだ。
早速、試してみる。
録音しながらはもちろん聞けない。
帰りの車の中で聞いてみる。
なんとも素敵。
当時、遠距離だった私は、何度も何度も、文字通り擦り切れるほどに、そのカセットテープ、彼の歌声を聴いていた。
惚れ惚れしていた。
若かった。と今では思う。
彼はスピッツの草野マサムネさんに、少しだけ似ていた。
自分でも意識していたのかどうか、今ではもう知るすべはないが、彼はよくスピッツの歌を歌っていた。
見た目だけではなく、ハスキーボイス(草野さんはハスキーボイス?)で、高音が多いスピッツの曲を好んで歌っていた。
その中でも一番のお気に入りが「チェリー」

”愛してるの言葉だけで強くなれる気がしたよ”
文頭にも書いたが、そのころの私は従順だった。
愛してるの言葉だけで、遠距離だって、会えなくたって、擦り切れそうなカセットテープの、決して上手とは言えない彼の歌声で、それだけで強くなれた。
従順だったあのころの自分がなんとも羨ましい。
今でも目に浮かぶ、”曲がりくねった道を行く〜”と聞きながら、歌いながら、曲がりくねった道をくだったドライブ。
最後には全く他人行儀に電話を切られ、(今思えば隣に新しい女がいたはず)、漫画でよく見る頭にガーンというシーンを初体験したあのころ。
今ではいい思い出とは、このことに関しては言えないが、久しぶりに聞いてみてももう、心は痛まないのかもしれない。

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